Q25:明治以前の蝦夷地統治とは?

日本会議北海道本部の質問2

「明治政府が北海道を日本の領土に入れ」とあるが、貴職の考える領土とは何か。また、これ以前、北海道は何処に属していたのか。豊臣秀吉や徳川家康が蠣崎氏に蝦夷地統治を許容し、江戸幕府による北方警備や直轄統治、松前藩の蝦夷地における権限拡充という歴史的事実に照らして回答されたい。

『隣交始末物語』(雨森芳洲、18世紀初頭)

大凡日本の内にて外国に接する国、西方にては長崎・薩州・対州。東方にては松前也。琉球は薩州の属国、蝦夷は辺僻の小醜、長崎へ来る唐人は商賣の輩のみなれは、いつれもふかくおそるるにたらさるの地にあらすや。

『露西亜人取扱手留』(松平定信、18世紀末)

ネムロに御下知をまつといふは、日本地にあらざれば追い払ふべきこともなき

A25:

江戸時代の基本的認識は、幕府の統治が及ぶのは松前藩までであり、蝦夷地は外国であるというものであった。

Q24:先住民族であることを誰が決めるべきなのですか?

日本会議北海道本部の見解

回答書は、国会決議、官房長官談話等を根拠にしました。しかし、この問題は人類学や考古学等の研究成果として結論付けられるべきものです。国会議員が判断できるはずもなく、その意味で、それを根拠とする回答が的外れであることは誰の目にも明らかでしょう。

公開質問状に対する北海道知事の回答

先ず、アイヌ民族が日本の先住民族であることにつきましては、平成20年6月6日の国会において「アイヌ民族を先住民族とすることを求める決議」が全会一致で採択され、これを踏まえた内閣官房長官談話において「政府としても、アイヌの人々が日本列島北部周辺、とりわけ北海道に先住し、独自の言語、宗教や文化の独自性を有する先住民族であるとの認識」が示されています。

参議院のあらまし:本会議決議

一般的には、議院が行う決議は法的効果を有しませんが、前述の内閣不信任・信任決議や、常任委員長解任決議(国会法第30条の2)のように法的効果を伴うものもあります。しかし、法的効果を有しないとはいえ、国権の最高機関たる国会を構成する参議院又は衆議院が行った決議の重みを考慮すれば、政治的効果や道義的効果が生ずるといえます。例えば、政策的決議は、国会による行政監視機能の一態様として内閣にその遵守を求めるものであり、内閣は行政権の行使について国会に連帯して責任を負っていることから、政治的道義的な効果を有しているものと解されています。

先住民族の権利に関する国際連合宣言

第 3 条 【自己決定権】 先住民族は、自己決定の権利を有する。この権利に基づき、先住民族は、自ら の政治的地位を自由に決定し、ならびにその経済的、社会的および文化的発展 を自由に追求する。

日本国憲法

第十一条  国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。

第四十一条  国会は、国権の最高機関であつて、国の唯一の立法機関である。

第169回国会 衆議院会議録第37号

これまで、一国一民族一言語という誤った認識を多くの国民が持っておりましたが、この認識が、本日の決議により、歴史的英断をおって改められますことは大変意義不快ことであります。(2008/6/6 笹川堯衆議院議員)

A24:

先住民族は自己決定権を持つので,これが尊重されなければならない。それを政策として具体化する上で,国民の名のもとに、アイヌ民族が先住民族である旨が宣言された。国会(立法)、政府(行政)、裁判所(司法)の三権の中で、国会が国権の最高機関であることから,行政はこの国会決議をもとに現行法を解釈して運用するよう努力することが求められる。

Q23: アイヌ人と日本人は縄文人の子孫か?

日本会議北海道本部の見解

なお、三貫地遺跡(福島県)の人骨DNA分析の結果、アイヌ人は我々日本人と同様に縄文人の子孫であることが明らかになっております。

【プレスリリース】『縄文人の核ゲノム配列をはじめて決定 〜東ユーラシア人の中で最初に分岐したのは縄文人だった〜』

三貫地縄文人のゲノム塩基配列を現代人のゲノムデータと主成分分析法*を用いて比較したところ、大きくアフリカ人、西ユーラシア人、東ユーラシア人にわかれるなかで、三貫地縄文人は東ユーラシア人にもっとも近く位置しました。そこで、三貫地縄文人と東ユーラシア人だけで比較したところ、図1のようになりました。ヤマト人(東京周辺に居住している日本人)が三貫地縄文人と北京周辺の中国人にはさまれた位置にあり、ヤマト人はこれら2集団のあいだの混血であることが示唆されます。

つぎに三貫地縄文人のゲノム塩基配列を東ユーラシアのさまざまな人類集団の全ゲノムSNPデータと比較したところ、ここでもヤマト人は、縄文人と東アジア北方の集団との中間に位置していました。さらに、日本列島3集団および北京の中国人と比較した場合、第1主成分(全体の遺伝的多様性をもっとも大きく示す軸)では、三貫地縄文人はアイヌ人ともっと近く、そのあとはオキナワ人、ヤマト人、中国人(北京在住者)の順となります。一方第2主成分(全体の遺伝的多様性を二番目に大きく示す軸であり、第1主成分とは数学的に独立)でみると、三貫地縄文人はむしろオキナワ人やヤマト人に近くなっています。これは、アイヌ人がもっとも縄文人のゲノムを多く持っているが、おそらく北方人類集団との混血を経ており、オキナワ人はアイヌ人より縄文人のゲノムを少なく持っており、ヤマト人はさらに少ない割合だが、縄文人のゲノムがそれなりに伝わっていると推定したわれわれの以前の研究(論文2,論文3)と一致しています。

A23:

縄文人は日本人の祖先の一つではあるが、現在の日本人は縄文人と東アジア北方の集団(中国など)との混血である。一方、アイヌ人は縄文人と北方人類集団との混血である。したがって、縄文人を共通の祖先としてそこから分岐したと考えるだけでは不十分である。

日本会議北海道本部による公開質問状

2016年5月28日付で、日本会議北海道本部は北海道博物館および北海道知事宛てに公開質問状を提出した。この公開質問状に対する北海道知事名の回答を受けて、以下のサイトを公開している。

えっ!明治以前の北海道って日本じゃなかったの?

とくに注目する必要があるのは、回答に対して「対策委員会の見解」と題して表明された歴史修正主義的ないびつな北海道史である。

質問1

人類が日本列島に生活したのは4万年前、日本人がDNAを受け継いでいる縄文人は、1万3千年前からとされています(国立東京博物館)。
このような中で「日本の先住民族」とはどのような人たちを指すのか。「先住民族」の定義と共にアイヌがそれに相当する理由を、(自然・歴史・文化に関する総合的研究博物館)を謳う同館の使命という観点から説明されたい。

対策委員会の見解1

そもそもこの解説は正しいのでしょうか? アイヌ人は日本の先住民族なのでしょうか?
回答書は、国会決議、官房長官談話等を根拠にしました。しかし、この問題は人類学や考古学等の研究成果として結論付けられるべきものです。国会議員が判断できるはずもなく、その意味で、それを根拠とする回答が的外れであることは誰の目にも明らかでしょう。
回答書は、その内容によって図らずもアイヌ人が日本の先住民族ではないことを吐露してしまった訳ですが、少なくとも、アイヌの先住民族性に学術論争や異説がある以上、両論併記して展示することが、公立博物館運営の基本でなければなりません。
なお、三貫地遺跡(福島県)の人骨DNA分析の結果、アイヌ人は我々日本人と同様に縄文人の子孫であることが明らかになっております。

質問2

「明治政府が北海道を日本の領土に入れ」とあるが、貴職の考える領土とは何か。また、これ以前、北海道は何処に属していたのか。豊臣秀吉や徳川家康が蠣崎氏に蝦夷地統治を許容し、江戸幕府による北方警備や直轄統治、松前藩の蝦夷地における権限拡充という歴史的事実に照らして回答されたい。

対策委員会の見解2

 これもまた、摩訶不思議な解説です。国際法が未成熟な時代、領海・領土概念が希薄であった実情を否定するものではありません。しかしながら、私たちの良識に照らし、真っ当な歴史認識として、この解説に同意する人はほとんどいないでしょう。同館には多数の学芸員が在籍しますが、解説担当者は、どうやら「明治以前の北海道は日本ではなかった」と言いたいようです。ならば、どこに帰属し誰の土地であったのか…。アイヌ展示コーナーという条件下でこの文意をひも解けば、”北海道はアイヌのものであった”。それが論理的帰結であり、また展示側の真意ということでありましょう。
回答書は、当時の北海道が日本の諸藩と異なる位置づけだった経緯やアイヌ社会の一定の自立性、明治以降近代国家に組み込まれた等の理由を挙げておりますが、「日本の領土に入れ」との国語的意味や語感に照らし、いずれも後知恵による詭弁を弄する類と言わなければなりません。
北海道自身が編んだ「北海道史」には「日本書紀に蝦夷の記述があること」「律令時代には管轄も明示されていたこと」が記されていることも、あえて付言しておきたいと思います。

質問3

 和人との混住は、アイヌにとって〝打撃〟であり〝苦しみ〟であったことが強調された展示になっている。和人がもたらした文明の恩恵は、アイヌも同じ日本人として等しく享受してきたはずであるが、負の側面のみを強調する意図は何か。
また、アイヌ文化の一例であるイオマンテ(熊の生贄)、ワナによる動物捕獲等の禁止については、自然保護や動物との共生、また幼女(女性)に対する入墨禁止については女性の人権、健康という各観点を踏まえて回答されたい。

対策委員会の見解3

アイヌ展示コーナーとはいえ、この解説はあまりに一方的というほかありません。同じ解説は館内展示「1-4 蝦夷地から北海道へ」「2-4歩みをたどる」でも繰り返され、ガイドブック(2015年初版)では、同じ内容または要旨を同じくする記述が、16頁、17頁、18頁、23頁で重ねて展開されます。正に、インディアンを滅ぼしたアメリカ西部開拓史を彷彿させますが、さて、この北海道で本当にそのような歴史事実があったのでしょうか?

アイヌとインディアンの境遇を同一視できるわけもなく、小さな小競り合いを除き、日本(ないし日本人)が国家(ないし総体意思)としてアイヌ人を虐殺し、搾取したなどの歴史事実はまったく存在しません。
公開質問では、アイヌを被害者とするなど負の側面のみを強調する意図と共に、近代化への過程における文化的接触や衝突~熊の生贄、幼女の入墨等の禁止~等の評価を問いました。回答は「アイヌ民族の…伝統文化の様々な要素が否定され」とするのみです。近代化がもたらした環境衛生の向上、寿命の伸長、識字率向上等の恩恵には一切触れません。

ならば、私たちは再度問い直さねばなりません。仮に、アイヌのそれら原始的習俗が彼らの伝統文化だとして、近代国家に生きる私たちがなおそれらを許容し尊重すべきなのかと。そして、現代日本人は、アイヌを一方的に加害、抑圧した先人の子孫なのかと…。  答えはあまりにも明白でありましょう。

この「見解」について、検証していくことにする。

Q22: 金子氏の発言はヘイトスピーチに該当するか?

金子氏の発言

8月16日にこの問題が初めて毎日新聞社で報道されてから1カ月がたちますけれども、この間、アイヌ民族は本当にいるのか、本当に先住民族なのかという根本的な議論に臨んできた方は、残念ながら、まだ一人もいないのが現実であります。良識ある言論の府として、市議会が数の力で一つの意見を封殺しようとするのは自殺行為だと私には思えます。一方通行の決議案に時間を費やすのではなく、ぜひ双方向で私の議論に答えていただきたいと思います。(2014/9/22 札幌市議会)

金子氏に対する辞職勧告(大島薫議員)

制度や事業の運用面で不備や不正と思われる点があれば、それを正していくことは当然のことと言えますが、利権、特権と断ずる根拠は何も示されていません。ましてや、「私も選挙に落ちたら〇〇〇になろうかな」との書き込みは、差別意識がそのままあらわされているものです。差別の再生産をやめようと言いながら、アイヌ民族に対する憎悪や差別を扇動しているのは金子議員自身であります。

以上、金子議員がアイヌ民族なんてもういないとするさまざまな説明に対して、その誤りを指摘してまいりました。滅び行く民族とされる苦難の歴史を強いてきたのは、ほかでもない私たちが住む日本という国家です。そして、アイヌ民族であることを隠して生きなければならない社会が今も存在します。

国連人種差別撤廃委員会は、8月末、日本の人権状況の悪化に強い懸念を示し、日本政府に対して、国連人種差別撤廃条約に依拠して民族差別禁止のための包括的な立法措置をとることを強く求めています。また、国連人権委員会からは、アイヌ文化振興法を見直し、アイヌ民族の政策立案や土地などに関する権利を保障すべきとの勧告が出されている国際社会の現実に、私たちは誠実に向き合う必要があります。

もとより、議会及び議員は、言論の自由のもと、さまざまな課題について議論、発言することにより、市民の負託に応えることが期待されています。しかし、何を言っても自由であり、許されるということではありません。誤りを認めずに、自分に都合のいい断片的事実や根拠のない言説をつなぎ合わせて自説に固執する態度をとり続けることは決して許されないとの姿勢を札幌市議会の決意として示すべきと考えます。(2014/9/22 札幌市議会)

参議院におけるヘイトスピーチ規制法案の審議

○有田芳生君 そういう認識に立ってもらわなければ困ります。
もう一点最後に、時間が来ましたので、アイヌ民族に対するヘイトスピーチです。
二〇一四年からずっと続いております。二〇一四年八月十一日、アイヌ民族、今はもういない、二〇一四年八月二十二日、アイヌ利権がある、二〇一四年の十一月八日には銀座でアイヌをターゲットにしたヘイトスピーチデモが行われました。そういう事態が現実にあるわけですから、これはもうアイヌ民族へのヘイトスピーチについては立法事実があるんですよね。ところが、与党案では外国籍者あるいは外国の出身者が不当な差別的言動の対象になっておりますけれども、アイヌ民族については除外されている。
やはり、人種差別撤廃条約の定義に基づいて民族というものを外してはならないのではないかというのがこのヘイトスピーチ問題の核心的部分だと思いますが、いかがでしょうか。
○西田昌司君 我々側としましては、今目の前で行われてきたこの在日コリアンの方々に対するヘイトスピーチをいかにして食い止めるかという、そこを立法事実としてこの法律を作ってきたわけでございます。
もとよりアイヌの方に対する差別が、またヘイトが許されるものではありません。しかし、そこはこの法律を議論していく中で、いわゆる行政のこの法律の運用面含めて、この国会の議論の中で、アイヌの方々も含めヘイト許されないということは運用面で、運用面と申しましょうか、要するにこれ理念法でございますから、宣言することによって可能ではないかと思っております。附帯決議始め、そこにも当然含まれるんだと、そういう御意見は是非先生方からお寄せいただいて、実りある立法にさせていきたいと思っております。(2016/4/18 参議院法務委員会)

A22:

札幌市議会での辞職勧告では「ヘイトスピーチ」という用語こそ用いられなかったが、「憎悪や差別を煽動」という表現および人種差別撤廃条約に言及したことから、金子氏の発言がヘイトスピーチであるという認識であったことは明らかである。国会でのヘイトスピーチ規制法案の審議の場においては、金子氏の発言はヘイトスピーチの例として挙げられている。

 

 

 

Q21: 金子・小野寺氏の発言にある背景は何か?

金子氏の発言

日本書紀によりますと、7世紀、斉明天皇4年の時代には、既に朝廷が北海道の蝦夷から樺太の粛慎を平定し、後志地方に郡司を置いて支配していたとの記録があります。(2014/9/22 札幌市議会)

小野寺氏の発言

ということは、多分、国連宣言の言う先住民と、我々がアイヌを先住民だとする先住民の意味は違うというふうに私は思っておりますし、ともすれば、アイヌの方々が先に北海道に住んでいて、日本人がそれを奪ったというような間違えた認識が広がっていると感じておりますので、それは違うのだということを、北海道としてもしっかり広報していただきたいと思いますし、それが非常に重要なことだと思っております。 (2011/12/6 北海道議会)

A21:

国粋主義的,あるいは排外的な思想が金子・小野寺両氏の発言と非常に親和性が強く,それを標榜する団体が彼らの発言を支持している。

Q20: 「日本国民」とは?

小野寺氏の発言

先ほど言ったように、北海道に関して、アイヌに断りもなく、一方的に日本にしたというような表記は、本当に問題があると思いますし、日本国民の概念についての表記も、日本国民は多民族である、その中には、アイヌ民族や和人、在日朝鮮・韓国人が含まれるというようなことを書いてありますが、民族の定義もなしに、そのようなことを書いていいのかというふうに、私は非常に疑念を持っておりますが、もし、こういうような間違えた表記があった場合には、道は、どのような責任をとる必要があると考えているのか、お聞かせください。

日本国憲法

第十条 日本国民たる要件は、法律でこれを定める。

第十一条 国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。

第十二条 この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。
第十三条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。
第十四条 すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。

外務省『人種差別撤廃条約Q&A』

Q2 アイヌの人々や在日韓国・朝鮮人は、この条約の対象に含まれるのですか。

A2 アイヌの人々については、現在、様々な議論がなされているところですが、独自の宗教及び言語を有し、また、文化の独自性を有していること等より、社会通念上、文化的諸特徴を共有するとされている人々の出身者であると考えられますので、この条約にいう「民族的若しくは種族的出身」の範疇に含まれるといって差し支えないと認識しています。また、この条約は、社会通念上、生物学的若しくは文化的な諸特徴を共有していることに基づく差別を遍く禁止するものであるので、Q4の答で述べるような「国籍」の有無という法的地位に基づく異なる取扱いに当たらない限り、在日韓国・朝鮮人を始めとする我が国に在留する外国人についても、これらの事由に基づく差別が行われる場合には、この条約の対象となります。

A20:

日本国民という用語は日本国籍を持つものという意味で解釈されるとは限らない。とくに人権問題についてそれより広い範囲を指す場合があり,「日本国の住民」という意味で用いられることがある。そのことは,憲法の人権規定および人種差別撤廃条約の効力が日本国内でどこまで及ぶかを考えればわかるだろう。外国籍の住民が基本的人権をもたないと考えるのは明らかに間違いだし,この条約が外国籍の住民に対して効力を持たなければ,そもそも批准する意味が全くないことになる。

Q19: 「副読本」ってどのようなもの?

小野寺氏の発言

アイヌ文化振興財団が、小学校4年生と中学校2年生の全道すべての生徒に副読本を配って、授業を行っているというようなお話をお聞きしておりますが、副読本に書かれている表記には、多くの問題があるというふうに私は思っています。

アイヌ文化の振興並びにアイヌの伝統等に関する知識の普及及び啓発に関する法律(アイヌ文化法)

第七条  国土交通大臣及び文部科学大臣は、アイヌ文化の振興等を目的とする一般社団法人又は一般財団法人であって、次条に規定する業務を適正かつ確実に行うことができると認められるものを、その申請により、全国を通じて一に限り、同条に規定する業務を行う者として指定することができる。

財団法人アイヌ文化振興・研究機構のサイトより

アイヌ民族 : 歴史と現在

この本は、アイヌ民族についてみなさんに知ってもらうために作りました。
今の日本の社会科の教科書に書かれていることの、ほとんどは和人の社会や文化についてです。しかし、日本には和人だけがくらしてきたわけではなく、アイヌ民族も昔から日本列島に住んできました。そこで、アイヌ民族の歴史や文化について学んでもらうのが、この本の役目です。

A19:

「副読本」とは,アイヌ文化法に基づいて設立された財団が,北海道の小中学生向けに作成した北海道史(アイヌ史)の副教材を指す。小野寺氏が内容に介入したために,一度作成した副読本が回収され,文章の差し替えが行われることになったが,今度は著者らがそれを問題視し,結局ほぼ修正なしで配布されることとなった。

 

Q18: 明治2年当時,アイヌが北海道を支配していた?

小野寺氏の発言

例えば、「1869年に」──明治2年ですが、「1869年に日本政府は、この島を「北海道」と呼ぶように決め、アイヌの人たちにことわりなく、一方的に日本の一部にしました。」という表記があります。この記述では、明治2年当時、アイヌが北海道を支配していたと認めるような文章になっていて、これは誤解を招く表記ではないかというふうに思いますが、この点について、私は、歴史的事実と認識が食い違うというふうに考えておりますが、部の見解をお聞かせ願います。

北海道庁編『新北海道史』

アイヌは従来請負制度の下にあって、多くの束縛を受けていた。身分においては、最初は蝦夷と呼んで日本人と区別し、化外の民として、雑居を許さず、乙名・小使等の役目を設けて自治を許し、帰化することを許さなかったが、幕府の直轄以来帰俗を許し、帰化した者は村方もしくは帰俗土人として百姓同様の待遇を与えるようになったあとも、民籍は依然日本人である出稼人・永住人とは区別され、諸届類のごときも、役土人といえでおも従属的な地位におかれていた。(第三巻 通説二  p.882)

A18:

幕府の直轄以降もアイヌ民族は「化外の民」すなわち直接の支配を受けなかった(場所請負人がアイヌを使役することは容認されていたが)。北海道は対外的には日本政府が領有することが認められたといえども,実質的にその支配を及ぼすことができるのは明治以降のことになる。

 

 

 

小野寺まさる北海道議(当時)によるアイヌ民族の歴史副読本への介入

北海道議会予算特別委員会 (2011年12月6日)

◆(小野寺秀委員) 本当にそれでいいのですかね。知事が、財団に対しても厳しく指導する、アイヌ協会に対しても厳しく指導すると言ったにもかかわらず、現物がなく、払ったお金を返してもらう努力をしているだけで、本当にいいのか。私は、もしかしたら、これは犯罪かもしれないというふうに思っておりますが、多くの質問がありますので、次に進みます。
次に、アイヌ文化振興財団がつくっている副読本についてお伺いをしてまいります。
アイヌ文化振興財団が、小学校4年生と中学校2年生の全道すべての生徒に副読本を配って、授業を行っているというようなお話をお聞きしておりますが、副読本に書かれている表記には、多くの問題があるというふうに私は思っています。
例えば、「1869年に」──明治2年ですが、「1869年に日本政府は、この島を「北海道」と呼ぶように決め、アイヌの人たちにことわりなく、一方的に日本の一部にしました。」という表記があります。この記述では、明治2年当時、アイヌが北海道を支配していたと認めるような文章になっていて、これは誤解を招く表記ではないかというふうに思いますが、この点について、私は、歴史的事実と認識が食い違うというふうに考えておりますが、部の見解をお聞かせ願います。

○(道下大樹委員長) 環境生活部長山谷吉宏君。

◎(山谷環境生活部長) 副読本の記述内容に関連してでございますが、財団で発行しております小学生向け副読本には、委員が御指摘の点が記述されておりますが、北海道の帰属などにつきましては、平成4年1月の、参議院議員からの質問主意書に対する政府答弁書によりますと、「いわゆる北海道本島は、我が国の固有の領土であって、これが具体的にいつ我が国の領土となったかは明らかではないが、江戸時代末から明治時代初めにかけて、我が国とロシアとの間で国境の確定が行われた際、いわゆる北海道本島については全く問題とならず、これが我が国の領土であることは当然の前提であった。」「いわゆる北海道本島は我が国の固有の領土であり、アイヌの人々は本来日本国民である。」「いわゆる北海道本島において、アイヌの人々が古くから住んでいたということは、文献等からみて通説になっていると承知している。」と記されており、そうした歴史的経緯を踏まえて、今日に至っているものと理解をしております。
以上でございます。

◆(小野寺秀委員) では、この副読本に書いてある「アイヌの人たちにことわりなく、」という表記は必要ないのじゃないでしょうか。何で断りを入れなきゃいけないのだというふうに思いますし、そこら辺のことは、しっかりと精査をしていただきたいというふうに思います。
副読本について質問を続けますが、北方領土の件に関係してお伺いしますけれども、北方領土に関するパンフレットの「北方領土問題を学ぼう」の中に、「北方四島(北方領土)は、いまだかつて一度も外国の領土となったことのない」との記載がありまして、北海道本島も同じであるというふうに私は思います。
平成19年に、国連総会において、アイヌが先住民であるという決議をしておりますが、この採択に当たって、我が国の考え方をしっかりと説明した上で、国連の決議として採択をしたというふうに考えておりますが、アイヌ民族を我が国がどう考えているのかということを御説明願います。

◎(山谷環境生活部長) 北海道の帰属の考え方などについてでございますが、先ほど御答弁を申し上げましたとおり、平成4年1月の、参議院議員からの質問主意書に対する政府答弁書によりますと、「江戸時代末から明治時代初めにかけて、我が国とロシアとの間で国境の確定が行われた際、いわゆる北海道本島については全く問題とならず、これが我が国の領土であることは当然の前提であった。」とされているところでありまして、そうした歴史的経緯を踏まえて、今日に至っているものと理解をしております。
また、先住民族の権利に関する国際連合宣言の採択に際しての政府の考え方についてでございますが、平成21年7月に取りまとめられた、国における、アイヌ政策のあり方に関する有識者懇談会の報告書によりますと、政府の考え方につきまして、我が国政府は、宣言に言う自決権については、宣言が明らかにしているように、先住民族に対して、居住している国から分離、独立する権利を付与するものではないこと、宣言に言う集団的権利については、宣言に記述された権利は個人が共有するものであり、各個人がその有する権利を、同じ権利を持つ他の個人とともに行使することができるとの趣旨であると考えること、さらに、宣言に記述された権利は、他者の権利を害するものであってはならず、財産権については、各国の国内法制による合理的な制約が課されるものであると考えていることなどを説明したとされているところであります。
以上でございます。

◆(小野寺秀委員) ということは、多分、国連宣言の言う先住民と、我々がアイヌを先住民だとする先住民の意味は違うというふうに私は思っておりますし、ともすれば、アイヌの方々が先に北海道に住んでいて、日本人がそれを奪ったというような間違えた認識が広がっていると感じておりますので、それは違うのだということを、北海道としてもしっかり広報していただきたいと思いますし、それが非常に重要なことだと思っております。
次に、副読本の編集委員の選任についてお聞かせ願いたいというふうに思いますが、この副読本は、編集委員会をつくって作成しているわけですけれども、編集委員長がアイヌ協会のある支部の支部長さんで、あとの多くは小学校の先生というメンバーで、この副読本をつくっています。本当に、これで問題がないのか。専門家が余り入っていないのですが、その点についてお聞かせください。

○(道下大樹委員長) アイヌ政策推進室長和田秀樹君。

◎(和田アイヌ政策推進室長) 副読本の編集委員の選任に関連してでございますけれども、財団では、この副読本の作成に当たり、学校教育の場で活用する補助教材として、道内外の小学校、中学校に配付するため、アイヌ文化伝承活動実践者が3名、アイヌの歴史や文化に関する研究者が2名、学校でアイヌに関する授業等に取り組んだ経験のある教員が4名、計9名から成る編集委員会を設置し、数次にわたる検討を行い、それぞれの専門分野ごとに分担執筆をし、相互にチェックするなどして作成するなど、財団において所定の手続を経たものと承知しております。
副読本が義務教育課程において活用されることを財団におきましては十二分に認識して作成されることは、当然のことでありますので、このような視点のもとで、選任手続が進められることが必要ではないかと考えているところでございます。

◆(小野寺秀委員) 財団がつくっているからといって、北海道がその内容を知らないということにはならないと思います。
先ほど言ったように、北海道に関して、アイヌに断りもなく、一方的に日本にしたというような表記は、本当に問題があると思いますし、日本国民の概念についての表記も、日本国民は多民族である、その中には、アイヌ民族や和人、在日朝鮮・韓国人が含まれるというようなことを書いてありますが、民族の定義もなしに、そのようなことを書いていいのかというふうに、私は非常に疑念を持っておりますが、もし、こういうような間違えた表記があった場合には、道は、どのような責任をとる必要があると考えているのか、お聞かせください。

◎(山谷環境生活部長) アイヌに関します小中学生向け副読本の発行にかかわる道の対応などについてでございますが、委員が御指摘の副読本につきまして、その編集等につきましては、先ほど御答弁申し上げましたように、財団で、それぞれ編集委員等を選任し、編集委員会を設置して作成してきているところではあります。
しかしながら、その記述内容や表現などにつきましては、学校教育の場で利用されるという観点から、児童生徒の発達段階に即し、わかりやすく、より適切なものとなるよう、不断に努めていかなければならないものであり、そうした観点に立って、編集の進め方などについて、財団を所管する国と協議し、適切に対処してまいりたいというふうに考えております。
以上でございます。